こんにちは!リュウタロウ先生です。
今回は、Mrs. GREEN APPLEの「ライラック」について、詳しく解説していきます。
「なぜか分からないけど、すごく惹きつけられる」
「中毒性がある」
皆さんがそう感じるのには、ちゃんとした理由があります。この曲には、ミセスの高度な音楽的テクニックと戦略が、これでもかというほど詰まっているんです。
音楽の知識がまったくない方にも分かるように、「ライラック」の秘密を徹底的に解き明かしていきます!
「とりあえず歌始まり」に勝つ!「楽器始まり」へのこだわり
まず、この曲の「始まり方」に注目です。
最近のヒット曲は、サブスクでいきなり心を掴むために、イントロを飛ばしてAメロやサビから始まる「歌始まり」が本当に多いですよね。
でも、「ライラック」はあえて「ギターのイントロ」から始まります。
これ、実はすごく勇気がいることなんです。なぜなら、楽器始まりにする場合、その楽器のフレーズが「歌の魅力」に勝たなければいけないからです。
そして、この「ライラック」のギターイントロは……完全に歌に勝っていますよね。
印象的なリフを聴いた瞬間に「あ、この曲だ!」と分かる。
「俺たちはバンドなんだから、ギターで聴かせるんだ」というミセスの強い気概が感じられて、僕はこのイントロが大好きです。
あのギターリフは「定番」と「あえての外し」でできている
では、あの「かっこいい!」と感じるギターリフの正体を、もう少し詳しく紐解いていきましょう。
基本は「ロックの王道」の音階
まず、あのフレーズの骨格は「マイナーペンタトニックスケール」という音の並びで作られています。
「スケール」という言葉を使うと難しく聞こえるかもしれませんが、これはロックやブルースで昔から使われている「これを使うと、それっぽくなる」という定番の音のパレット(絵の具のセット)だと思ってください。
だからこそ、私たちは直感的に「かっこいい!」と感じるわけです。
プロが唸る「あえての外し」テクニック
でも、この曲がすごいのは、その「定番」のパレットに、あえて含まれていない音を絶妙に混ぜ込んでいる点です。
実は、動画でも解説したこの部分。

この音は、定番のパレットには入っていない、伴奏のDmというコードの上で弾くには、ちょっと特殊な音なんです。
もし定番の音だけでこのフレーズを弾くと、どうなるか。正直、ちょっと「やぼったい」感じ、悪く言えば「いかにもペンタトニックです!」という古風な感じが出てしまうんです。
そこでミセスは、あえて不安定に響く音(専門用語でアボイドノート=避けるべき音と言ったりします)を使いました。
これにより、曲全体に独特の「浮遊感」が生まれ、ありきたりなロックフレーズとは一線を画す、おしゃれでモダンな響きを生み出すことに成功しているんです。
「あえての外し」はコードにも
要所要所で響く G♭のコード。
これはキーB♭のダイアトニックコードとしてみるとⅥ♭です。Ⅵ♭というコードは、同主調(この曲はB♭メジャーなので、同主調はB♭マイナー)に一瞬転調するために鳴らされるコードですが、この一瞬の転調が、Aメロが始まる前や、Aメロの折り返し地点で独特の浮遊感を作っています。
また、「拗れた美徳」の裏でなっているD♭→A♭というコード。こちらも、同主調であるB♭マイナー由来のコードです。
聴き手を飽きさせない「伏線だらけ」の曲構成
「ライラック」は、曲の展開(構成)も本当に見事です。
Aメロは「あえて繰り返さない」
まず、曲の前半(Aメロ)の伴奏(コード進行)に注目してください。 普通、曲は「Aメロはこのパターンの繰り返し」と決まっていることが多いのですが、「ライラック」は全然繰り返しがないんです。
次から次へと景色が変わっていく。 これにより、聴き手は「次は何が来るんだ?」と無意識に集中させられ、曲の世界にグイグイ引き込まれていきます。

Dメロで伏線回収!
そして、僕が聴いていて「うわー!嬉しい!」と叫んでしまったのが、終盤のDメロ、みんなで歌い上げる部分です。
ここで使われているのは、「456進行」と呼ばれる、J-POPで最も愛されている「王道の泣きメロ進行」なんです。
それまで複雑な展開で溜めてきたエネルギーを、曲の最後で一気に爆発させる! まるで、ミステリードラマの伏線をすべて回収するようなカタルシスがありますよね。これはもう、嫌でもノっちゃいます。
知れば知るほど「好きになっちゃう」曲
いかがでしたか?
正直、僕もこの曲を分析するまで「街で流れすぎてるな…」と少しうんざりしていた時期もあったんですが(笑)、こうして一つの「作品」として向き合ってみると、本当に緻密に計算され尽くした名曲だと再認識しました。
- 歌に勝る、気概のこもったギターイントロ
- 定番のカッコよさと、あえての「浮遊感」を両立させたリフ
- 聴き手を飽きさせない、伏線だらけの曲展開
- アニメに繋げるための、計算されたエンディング
皆さんも、ぜひこうした「秘密」を意識しながら、もう一度「ライラック」を聴いてみてください。
きっと、今までとは違った魅力に気づくはずです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
